調布航空宇宙センターはJAXAの本社が置かれる、日本の航空宇宙技術の未来を支えている研究施設です。 特にJAXAの中で唯一航空技術の研究を推進する機関であり、20棟以上ある研究設備はJAXA以外の航空技術を研究する大学や企業にも広く利用されています。
調布航空宇宙センターにおける航空分野の研究では、「環境」と「安全」を重要なテーマとし二酸化炭素や窒素酸化物の排出量を抑える環境にやさしいエンジンの開発や騒音の低減、 特殊気象に対応する技術開発などに取り組んでいます。 もちろん宇宙分野の研究も行っており、ロケットの打ち上げコストを大幅に下げることのできる再使用型の宇宙輸送システムの研究や、 スペースデブリ、宇宙探査ローバの研究開発などを行なっています。
さらに、調布航空宇宙センターにある日本最大規模の風洞設備およびスーパーコンピューターシステムをはじめとする新技術開発のための設備は、 日本の航空宇宙開発の基礎・基盤研究において非常に重要な役割を果たしています。
今回の展示では、実験用航空機の「飛翔」、実験用ヘリコプタBK117C-2、D-SEND#2の模型を展示しています。
「飛翔」はJAXAの実験用ジェット機であり、新技術やシステムの飛行実証といった航空分野のみならずロケット追跡管制システムの実証や衛星との同期観測などの宇宙分野における研究にも役立っています。 「飛翔」の導入により、それまでのヘリコプタやプロペラ機では実験できなかった高度および速度での実証実験が可能になりました。
BK117C-2は、JAXAの実験用ヘリコプタとして 災害時の救助の研究やヘリコプタの安全性・性能の向上、騒音低減の研究などに用いられています。日本のヘリコプタ利用の未来を支えている機体といえます。
D-SEND#2超音速試験機は「ソニックブーム」を低減させる形状を実証するために作られた試験機です。航空機が超音速で飛行する際に生じる衝撃波は「ソニックブーム」という大音響を発生することがありますが、このソニックブームは超音速旅客機の実現の上で大きな課題となっていました。D-SENDプロジェクトの第1フェーズ試験(D-SEND#1)は2011年5月にスウェーデン・エスレンジ実験上で行われ、気球落下試験によるソニックブームの計測方法を世界で初めて確立し、ソニックブームを推算するにあたって希少価値の高いデータを得ることにも成功しました。また、同実験場で2015年7月に実施された第2フェーズ試験(D-SEND#2)ではJAXA固有の低ソニックブーム設計技術をそなえた試験機が用いられ、さらなるソニックブーム低減技術の研究に有用なデータを得ることができました。このときに使用されたものが、今回展示するD-SEND#2超音速試験機です。